OBを訪ねてVol.01
自然と生きるのは楽しい。
ー 東京で見つけた自分の居場所
ー 人生を考え始めた2011年震災
ー 生きている言葉「優先順位をつけよ」
ことぶき農園経営
村田寿政さん
デザイン学校卒業。2005年F&S入社。
グラフィックデザイナーとして、紙媒体、Web、3Dコンピューターグラフィックスなどの制作を手がける。15年に退職後、熊本県南阿蘇に移住し「ことぶき農園」を開園。
東京で見つけた自分の居場所
僕は福島県生まれです。東京のデザイン学校では、3DCG(3Dコンピューター・グラフィックス)を学びました。卒業後に就職したのは東京の広告制作会社でCDジャケットのデザインやチラシ、ポスターなどを作っていましたが、会社が業績不振で廃業。ハローワークへ出向き、F&Sを見つけて訪ねた面接が最初の出会いでした。会社は当時表参道にあり、職種はデザイン制作会社です。プロのクリエーターが忙しく働く職場かとためらいながらドアを叩いたらアットホームな雰囲気でホッとしたのを覚えています。採用はしてもらえたものの、グラフィックデザインの仕事は自分が学んだ3Dデザインとはコンピューターソフトも異なり、通用するかどうか不安がありました。
やはり知らないことは多くありましたが、女性ふたりの先輩がやさしく怒ることもなく教えてくれてありがたかったですね。広告はクライアントの課題に応えるために、デザインの視点を考えることも学びました。いろいろな会社を担当するうちにペット関連や学習塾など僕の仕事を好んでくれるクライアントも増えて、「この会社のために頑張ろう」と思ったものです。入社して6年目くらいでしょうか。展示会のブースデザインの担当になって3Dイメージを作る機会があり、かつて積み上げたコンピューターグラフィックスの経験が役立ちました。その時、これで僕は貢献できる、自分の居場所ができたと強く感じました。今まで指導してもらってそれなりにやってはきたけれど、やはりどこかで気おくれがあったからです。今度は僕にしかできないスキルだと思い、仕事が本当に楽しくなっていきました。
人生を考え始めた2011年震災
仕事が楽しく順調だった2011年3月、東日本大震災が起きます。僕の故郷福島の被害も大きく、仕事がまともにできないほどの衝撃を受け、これからの自分を生き方を真剣に考え始めるようになりました。東京での勤務に自信がなくなり、「何があっても自分の力で生きていく仕事をしたい」と農業を思い描きます。でも、それを本当に実現できるのか、すぐに決心はつきません。まず、学んでみようと勤務しながら看護師の妻と毎週末に「アグリイノベーション大学」という農業の学校に通い続けました。
僕の気持ちの動きや、農業学校に通うことを社長は知っていましたが、今までと変わらずにずっと見守ってくれていました。自分が社内に影響を与えることのないようにと心を配って働くことも自身に課していた4年間。そして農業で生きていくとはっきり伝えた時に、「本人が決めたことだから、応援するよ」と言ってもらえたのです。2015年、お世話になって10年目でF&S退社。
新人時代から、ランチミーティングやご家族との夕飯に社員たちを招き、「自分の力を試したいなら、転職や独立もといいと思う」と話していらした。人を育てることに本気な方だと今もありがたく思っています。
生きている言葉「優先順位をつけよ」
農家として独立し経営者となった今、とても役に立っている社長の言葉が2つあります。一つは「どんな時でも相手のことを考えよ」。僕は作った野菜をお客さんへ配送する時に鮮度を保てる泥付きで届けたいのですが、マンション住まいなら泥落としは負担。だからきれいにして送るとか。2つ目は「優先順位をまず決めよ」。人生の選択だけでなく、天候に左右される種まきの時期や、何かお客さんにミスしてしまって慌てるような日常の中でも、「待てよ」と優先する解決策を素早く判断する習慣がつきました。
F&Sの卒業生として感謝したいと思っています。